過去に遡っての懲戒処分は有効?
日本の法律にも「法改正」があるように、会社のルールである就業規則も、必要に応じて内容が変更になる場合があります。
そして、就業規則には懲戒処分に関する規定も含まれます。
だから会社で何らかの問題が発生して
「これは懲戒処分にすべきだろう。」
という行為が就業規則に載っていなければ、懲戒規定が書き加えられる可能性も大いにあるわけです。
しかし、規則と処分の関係には一つの大きな原則があります。
それは、特定の行為を処分の対象にしようと新しく規則を作っても、過去に遡(さかのぼ)って処分を下すことはできないということです。
不遡及の原則とは
そもそも日本の憲法では、法律を後から作ったり、処分の内容を重くして過去の行為を裁くということを禁じています。
仮に「ゴミを分別せずに捨てたら懲役1年」という法律が何かの間違いで制定されたとしても、その法律が出来る前に「ゴミを分別せずに捨てた事がある」という人を懲役刑にすることは出来ないということです。
これは不遡及の原則(又は不利益不遡及の原則)などと呼ばれていて、会社の中で使われる就業規則も、当然この原則に従わなくてはなりません。
だから例えば、
「遅刻はその時間が5分でも、1時間分の減給」
という懲戒処分規定が新しく出来たとしても、それが効力を持つのは就業規則が出来た次の出勤日からです。
また、「1ヶ月に遅刻を3回したら、減給半日分」という懲戒処分を新しく作ったとしても、遅刻回数は規則を作った日よりも後の分だけしかカウントできません。
なお、逆に規則が変わって処分が軽くなった場合や、今まで懲戒処分になっていた行為がOKになった場合は、遡ってそれを適用しても(つまり処分を軽くしても)法的には問題ありません。
例えば「就業規則から5分以内の遅刻は減給処分の対象から除外する」
という規則を月末に作った場合には、月初の遅刻から処分の対象外にしても良いということです。
実質的な損害に対しては賠償義務も
ただし、会社の就業規則に規定されていなかったとしても、例えば勤務時間を不正に申告したり、重大な不注意で会社の設備を壊してしまったりすれば、その責任に見合うだけの損害賠償を請求される可能性は十分にあります。
つまり、会社の就業規則がどうなっているかという事に関係なく、悪いことや重大なミスをすれば、それなりのつぐないをする必要はあるということです。
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日本国憲法第39条