昇進の辞令を断れる?

昇進というのは労働者にとって、本来喜ぶべきものです。

与えられる権限も大きくなりますし、たいていの場合は給料も増えるわけですから、出世を望んでいる人なら大喜びで辞令に応じることでしょう。

しかし、会社のしくみによっては昇進すると仕事が極端に忙しくなったり、残業が一気に増えたりする場合もあります。

また、人によっては大きな責任を抱えるよりも、下っ端のまま働いていたほうが気楽だという事もあるかもしれません。

はたして、昇進の辞令を断ることはできるのでしょうか?

人事権と会社の裁量

労働契約では、誰にどのような仕事を任せるか、誰に役職を与えるかということを決定する権利、つまり人事権は会社の裁量に任されるというのが原則です。

だから法律論で言えば、単に「気楽に働きたい」とか、「忙しくなりそうだからイヤ」というような理由で昇進の辞令を断ることは無理ということになるでしょう。

会社には人事権があるので、正当な昇進の辞令を断るのは困難です

ただし、会社も「やりたくない」という人をわざわざ昇進させたくはないかも知れませんから、場合によっては事情を相談すれば、昇進の辞令を取り消してもらえる可能性はあると思います。

また、会社に人事権があるとはいっても、その権利は無制限ではありません。

極端な例にはなりますが、営業の第一線で働いている社員に「資材管理主任」という役職名をつけて、暗い倉庫で延々と荷物整理をさせる・・・というような悪意のある「昇進」なら、法律上も権利の濫用として認められないはずです。

昇進のマイナス面について

会社によっては、たとえば「課長以上になると残業代が支払われない」というところがあります。

その根拠は「管理監督者にあたる役職の人には残業代を支払わなくても良い」という法律上の取り決めがあるから、というもの。

しかし役職についているとはいえ、上司に仕事の内容を管理されながら働く労働者を管理監督者とみなすことは、そもそも違法行為です。
※詳しくは「管理職でも残業代は出る!」をご覧ください。

だから、昇進を直接断ることはできなくても、それにより発生するサービス残業はもちろん断る権利がありますし、既に行ったサービス残業があればその分の賃金支払いを求めることもできます。

また、昇進によって多少仕事が増えるのは仕方ないにしても、労働者が健康を損なう可能性のあるような激務や精神的な負担の増加がある場合は、会社の就業環境配慮義務違反とみなされる可能性もあるでしょう。

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