資格・免許の経費は自己負担?

会社に勤めていると、仕事の内容によっては免許や資格が必要になる事があります。

スキルは身に付けておいたほうが労働者にとっても得なことは確かですが、免許や資格を取得するために必要な経費は、労働者が負担しなければならないのでしょうか?

業務命令かどうかがポイント

労働者本人の自由意志ではなく、会社の都合によって免許・資格を取る事を命令されている場合、その取得にかかる経費は「会社が利益を上げるために必要な費用」と考える事ができます。

この場合は労働者に選択の余地が無いわけですから、資格・免許の取得経費を労働者の自己負担にさせたりすれば、会社の経費を労働者の給料から支払わせていると考えることができます。

これは賃金に関する労働基準法上の取り決め「全額払い」の原則に反していることになるでしょう。

業務命令によって発生した費用を労働者が負担するのは理不尽です

逆に、資格・免許を取る事によってその職場で希望の仕事をさせてもらえたり、プラスの評価・手当てなどが支給されるといったような「+α」の要素になっている場合はどうでしょうか?

このように労働者にも選択権が残っている場合は資格・免許の取得を命令によって強要されている訳ではありませんから、会社が経費を負担してくれなくても法律上の問題はありません。

ただ、仕事に関わる資格・免許を取得するための費用を誰が負担することになっているかについては、会社の人材育成に対する姿勢を判断する重要なポイントの一つだと思いますので、実際に労働契約を結ぶ前に確認しておいた方が良いと思います。

かかった費用を会社に返す必要はある?

会社によっては、資格や免許の取得にかかる経費を負担した後で労働者に辞められてしまうと「払い損」になってしまうので、「○ヵ月以内に退職した場合は取得にかかった金額を返還すること」というような契約を求めてくる場合があるかもしれません。

しかし、労働基準法では例え労働者が契約時に交わした約束事を守らなかったとしても、それに対して賠償金を設定するような契約を結ぶ事を禁止しています。

だから仮にそのような内容で合意した契約書が残っていたとしても、経費を返還する義務はありません。

ただし、業務命令ではなく労働者が希望する事によって会社の経費で資格・免許を取得しているにも関わらず、直後に労働者の自己都合で退職してしまった場合には、事情が変わってくるかも知れません。

過去には「会社から労働者に対する貸付金としての意味を持つ」と判断され、法的に経費の返還が認められたという判例もあるようです。

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-このページに関係する法律-
労働基準法第16条
労働基準法第24条
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